【完】今日、あなたじゃない彼と結婚を決めました

話しなんて、する事ない!

そう言いかけたのに、彼女は私へ向かい再び頭をぺこりと下げて、小走りで走り出して行ってしまった。

てっきり奏の彼女かと思ったけれど、それはこの間否定された。けれど私をジーっと見つめていたあの瞳はどこかで見覚えがあった。

奏と付き合っていた頃、奏の事を好きだった女の子たちと同じ視線だ。
映画館で見た時も思っていたけれど、あの人奏の事が好きなのではないだろうか。

「はぁー、喉渇いたぁ。」

そんな事も露知らずか、そう大きな声で言うと私へちらりと視線を移す。

「可愛らしい人。飲み会なんでしょう?待っているじゃないの?」

「お酒を飲みすぎると、喉が渇く。」

私の言葉を無視したまま、自分勝手に話を続ける。

「お茶でも、飲みませんか?」

そう言って悪戯な笑顔を作ると、近くにあったコンビニを指さした。
返事を待たずに私の持っていたバックを取り上げると、すたすたと歩いて行ってしまう。
やっぱり強引だ。しかしお茶でも飲みませんか?でコンビニはないだろう。

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