【完】今日、あなたじゃない彼と結婚を決めました
「私、分かる?高校までずっと一緒だった。
あ、今は結婚しちゃって佐々木になってるから、旧姓宇沢梢!」
「こず…?」
懐かしい響き。彼女のあだ名はずっと’こず’だった。その響きを聞いて嬉しそうに笑う彼女の、私の手を握る力は強くなった。
「そう!こずだよッ。さっき望月って聞いた時まさか笑真ちゃん?と思ったけれど…
本当に久しぶりだねぇ~。笑真ちゃんすっごく大人っぽくなってびっくりした~。」
「こずの方こそ…」
「私ったらすっかり太ってただのおばさんでしょう?3年前に子供産んだら元に戻らなくなっちゃって」
そう言って彼女は自分のお腹をペシッと叩いて笑った。それに合わせて、作り笑いを浮かべる。
「私達、会うの高校ぶりだよね?!」
「そうだね。本当に久しぶり、懐かしい。私ったら履歴書も見たのに気づかなくって、ごめんね?」
「んーん、全然。だって私すごく変わったから気づかなくって当たり前だよ」
本当は気づいていた。
こずは全然変わらない。小動物みたいに可愛らしい所も、底抜けに明るい雰囲気を身にまとっている所も。
高校時代から変わらない笑顔を見せる彼女を見て、現在も変わらずに幸せなんだと気づかされる。 そして自分がどれだけ変わってしまったのかも――。