【完】今日、あなたじゃない彼と結婚を決めました
「ごめん――」
「聞きたいのは謝罪の言葉なんかじゃない…」
「あの時、どうしても大学に通えない理由が出来た。」
「それは理由になってない。奏が大学を辞めたとしても私の気持ちは変わらなかった」
「自分の将来について分からなくなった。俺は……何だかんだ言ってたけれど、普通に大学を卒業した後は高瀬コーポレーションを兄貴と一緒に継いで
そして笑真と結婚して生きて行くんだって思った。そしてそんな人生を歩きたいって思った。
でもあの時、俺は自分の人生で信じてきたもの、全てを失った」
それは恐らく、自分が高瀬の人間ではないと知ってしまった日の事だ。
「そんな時、海外で仕事をしている友人に誘われた。
軌道に乗っている仕事を手伝わないかって。
大学に通えなくなるって分かってから、自分がどういう人生を歩んで行けばいいか分からなくなっていた時だった。
でもそんな俺の人生に、笑真は巻き込めないと思った。お前はまだ学生だったし、せっかく就職も決まって普通に生きて行けるのに、わざわざ俺と一緒に見知らぬ土地で、成功するかも分からない事業に巻き込めないだろ」