【完】今日、あなたじゃない彼と結婚を決めました
「どうしても大学に通えない理由って言うのは、お父さんの事?」
私の問いかけに、奏の動きがぴたりと止まる。
奏の腕に、自分の手をかける。そしてそれを揺さぶるように振ると奏は私からゆっくりと視線を外す。
「今まで何も知らなかった…。だって奏何も言ってくれなかった…。
大学はお父さんに辞めさせられたんでしょう?あの頃、駿くんだって言っていた。高瀬コーポレーションは奏と俺とでやっていくって。
奏だってそのつもりだったんでしょう?でも無理やり…自分の将来を潰されたんでしょう?」
「あの人が全て悪い訳ではないよ」
力なくその場に項垂れて、下を向いた奏の指先が僅かに震えていた。
「自分の血が流れていない子供を養育する義理なんてないだろう…」
消え入りそうな声で言った。
どうしてそんな大切な事さえ、私に何も言ってくれなかったの?
あの時、もしも奏が全てを話してくれていたとしたら、私は大学も辞めて奏についていった。誰に反対されようが、それがたとえ許されなくっても、奏以外に大切な物なんかなかった。
もしもそんな私についてくるなと奏が言ったとしても、約束があったのならばいくらでも待っていられた。何年でも、何10年でもきっと奏の帰りを待っていた。