【完】今日、あなたじゃない彼と結婚を決めました
強く奏の腕を握り締めると、力なく奏の手からペットボトルが地面に落ちていく。
月だけが私達を照らしていた。
「何となく、自分が親父の子供じゃないってのは分かってた。
離婚した理由が母親の不貞にあった事も。小さい頃、母親が誰かとその話をしていたのを聞いた記憶があった。
でもさ俺はずるいからそれを聞かなかった振りをして、たとえふたりが離婚した後も高瀬の人間である自分を守っていた。
けれど、あの日親父から突き放されて、自分がどうして存在しているかさえ疑問に思った」
「でも…それは奏のせいじゃない…。奏は何も悪くない」
「たとえ俺が悪くなくたって、俺が生きていて嫌な気持ちになる人間がいるのだとしたら、俺は罪だ。
自分が気持ち悪いよ。母親は親父と結婚してた頃から俺の父親だっつー人間と関係を持っていたって事だろう?
その間に生まれた人間が俺だ。それを考えたら自分が気持ち悪くて仕方がない…」
「奏の…奏のせいなんかじゃないんだよ……だから自分の事をそんな風に言うのは止めて…」