【完】今日、あなたじゃない彼と結婚を決めました
「だって…私が何を選んでも最終的に決めるの駿くんじゃんか!」
言ってしまって直ぐに’まずい’と思った。
こんな風に感情任せに発言をする女は、きっと駿くんが最も嫌いとするタイプだ。
「そんな事ないよ…。俺はいつも笑真の意見を尊重して…」
じゃあ、どうして私はいつも彼の前で自分を殺してしまっていたのだろう。
言いたい事をグッと呑み込んで、自分の気持ちを胸の奥で押し殺して。
昔の私はこんな人間じゃなかった気がする。もっと自由だった。奏の前での私は――。
しっかりもしていなくって、きちんとしていない事を奏は責めなかった。強引に見せて、私の想いを1番に尊重してくれて、奏の前でならば行きたい場所食べたい物を素直に言えた。
かっこつけていない、そのまんまの自分で居られた。
どうして――、こんな時に奏の事を考えているの。とっくの昔に捨ててきた過去の事を。
顔を上げると、いつもは優しく微笑んでいる駿くんが戸惑っているのが、分かった。だって、今まで私が駿くんに対してこんな口答えのような事をしてこなかったから。