【完】今日、あなたじゃない彼と結婚を決めました

「どうした?今日はやっぱり少し変だよ。何かあった?」

「…何でもない。ごめん。今の忘れて」

笑顔を取り繕っては見た物の、駿くんの表情は曇って行くばかりだった。
こんな変な雰囲気になんかなりたくないのに。

「今度の休み…笑真の行きたかった式場にも行って見ような?」

「うん…」

その口調はどこまでも優しかったから、’うん’としか言えなくなってしまった。

それから普通に会話は出来ていたような気もするが、レストランから出てマンションに帰るまで私達はどこか余所余所しかった。


結婚というワードを改めて考える。

これっていわゆるマリッジブルー?とも考えたけれど、どうやらそれだけではなかったらしい。


駿くんが寝静まった深夜。自室のオレンジ色の間接照明だけをつけて、私は再びパンドラの箱を開いてしまった。

あの時は冷静に見る事が出来なくって、途中で閉じてしまった’えまの宝物’

再びそれを開いて見ると、ふわりと奏の香水。今も昔も変わらない。海の男らしい匂い。それを嗅ぐだけで、やっぱり過去に引き戻されてしまう。

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