【完】今日、あなたじゃない彼と結婚を決めました
この白いダミエの財布とキーケースは元々好きなブランドだったけれど、キーケースだけは大学の入学祝いでお母さんに買って貰ったんだっけ。
それを奏に見せたら真似っこって言われた。
コンビニで買った玩具のキーホルダーは、当時キャンペーンでお茶についてきたおまけだった。
こんな小さな物だったけれど、奏に初めて買って貰った物だから嬉しくって仕方がなかった。
いきなり夜更け過ぎに実家に訊ねて来たかと思えば、リボンのついた箱を渡してきて開けたらハート型のネックレスが入っていた。決して高い物ではなかったけれど、何でもない日のプレゼント嬉しかった。
ピアスを開けたとき、奏のつけているピアスが欲しいって駄々をこねたら’気に入ってるのに’って渋々くれて、それからずっとこのピアスは私の左耳で揺れていた。
それだけじゃない。
撮りためていたプリクラ。増えていく度に嬉しくって。
初めてのクリスマスに貰った手袋。誕生日に貰ったお揃いのシルバーのバングル。
奏が旅行に行った時のお土産のオルゴール。ユーフォキャッチャーでとったぬいぐるみ。
数えて行けばキリが無い。小さい物から大きな物まで、人から見ればガラクタだって言われるものだって、捨てきれなかった。
忘れよう。思えば思う程、忘れられなかった。
写真の中で顔を寄せ合って笑うふたり。
私、もうこんな笑顔で笑う事は出来ない。