【完】今日、あなたじゃない彼と結婚を決めました
「あの…カフェの方はまだオープンはしないんですよ。そこの張り紙にもある通り5月からで」
「え。あ、すいません。
ちょっとぼんやりと見てただけですのでッ」
突然を声を掛けられて、振り返るとそこには見覚えのある顔があった。
ピンクのカーディガンを羽織ったその人は、私を見て一瞬驚いた顔をしたけれどにこりと微笑んだ。
「こんにちは。この間お会いしましたね。奏くんと……」
「こ、こんにちは。奏の会社の方ですよね?」
「挨拶が遅れてすいません。私こういう者でして」
そう言って、彼女は桜色の名刺ケースから名刺を1枚取り出した。
会社名の下に、原田 美園。と書かれている。 彼女はこの間街であった奏の同僚の女性だ。映画も一緒に行っていた。
そして恐らく奏に好意がある。
「すいません。私は名刺を持っていなくって。望月笑真と言います。
一応このショッピングモールの婦人フロアなどで働いています」
「知っています。奏くんによく話を聞いていますから」
一体何の話を奏から聞いているんだか…。しかし彼女から敵意は感じられなかった。寧ろ感じは良い女性だ。どっちかと言うと綺麗と言うよりかは可愛らしい感じの人で
映画館で見た時よりも声のトーンは落ち着いている。