【完】今日、あなたじゃない彼と結婚を決めました
「奏くん、今バックヤードに居ます。
今携帯で連絡を取りますね?」
「え、そんな…」
携帯を取り出すと彼女は直ぐに奏へと連絡を取り始めた。
この子の視線はいつか見たことがあった。奏と付き合っている時に、奏を好きだった女の子から沢山浴びせられた視線だった。
もしも彼女が私との事情を奏から聞いてあるのであれば、私という人間に良い気はしないだろう。けれど何故か彼女はすんなりと奏と連絡を取ってくれた。
「今すぐ行くって。奏くん慌ててました」
くすりと笑いながら彼女は携帯をポケットの中にしまう。
そして私の顔をジーっと見上げる。
「何か、すいません…」
「いえ。全然。奏くんが慌てる所はあんまり見ないので、ある意味貴重です」
「そうですか…。あいつ仕事はきちんとしてますか?」
「えぇ、とっても頼りになる先輩です。海外から来たっていうから最初はどんな人だろうって皆で話してたんですけど
奏くんは年上なのに話しやすくって、誰にでも優しくって会社ではムードメーカーですよ。
もう彼なしでは会社はうまく回らないんじゃないかなぁ?」