【完】今日、あなたじゃない彼と結婚を決めました
「可愛らしい人。いい子ね。あの子」
「そうだね。美園ちゃんはすげーいい子だよ。仕事でもめっちゃ助けられてるし」
「映画館で見かけた時からお似合いだと思ってた…。」
「笑真にはそれだけは言われたくないけど…つーか、今日はどうした?」
「ん。ちょっと…。」
一体何から話せばいいのだろう。伝えたい事は沢山あるのに上手にまとめられない。
ただただもう一度会いたくって。
私、奏と一緒に居ると…奏と時間を過ごしていると、昔に戻ってしまうよ。あなたに置いて行かれた自分なんて大嫌いだった筈なのに。変わりたいと思って沢山努力してきたつもりなのに。
あなたと居ると上手く笑えないし、ついつい愚痴っぽくなっちゃうし、良い子でもいられないけれど、やっぱり楽なの。
本当の自分で居られる気がして。 だからずっと会わない方がいいと思っていた。
「仕事は終わり?」
「うん、まぁ。早番だし」
「俺も今日は直帰しちゃおう。美園ちゃんに連絡入れておく。」
「また…そんな勝手な。」
「だいじょーぶ。今日の業務はもう終えた。
それより時間があるなら付き合ってよ?」
「付き合う?ってどこに?」
そう言った瞬間、奏は私の手を取って走り出した。