【完】今日、あなたじゃない彼と結婚を決めました

「ん~…空気が良いッ」

「都内とはやっぱり少し違うね。奏は日本に帰ってきてからよく来てるの?」

「本当にたまに。母さんのスナックに行くくらい。だって帰って来ても何にもないんだもん。」

「でもあの頃はこの街が全てだった」

「そうだな。10代の頃はこの街が全てだった。世界はこんなに広いのに、あの頃はこの街が俺にとっての全部だった」

切なく笑う横顔は、あの何も見ていないようなどこか遠くを見つめる虚ろな瞳。あの頃はその瞳の本当の寂しさに気づけなかった。

暮れ行く街並みを見つめて歩いて、私達は色々な話をした。

「あんな小さなショッピングモールをデパートなんて呼んではしゃいでたな」

「うちらの地元と言えば集まる場所はそんなに多くはないからね」

「笑真はいっつもプリクラ撮ろうってうるさかったなぁー」

「はぁ?奏の方がノリノリだったじゃん。
あの頃ネットのプロフィールサイトが流行ってて、プリクラの画像待ち受けにしてたなぁ。」

「そういえば笑真ブログとかやってなかった?俺とのプリクラめっちゃ貼ってさ。
今考えたら相当危険だな。最近はSNSも発展して個人情報の取り締まりも厳しくなってきたし?
危機管理能力なさすぎな?」

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