【完】今日、あなたじゃない彼と結婚を決めました
「奏が自分ひとりで何かを抱えているのはずっと知っていた。
それなのにあんなに一緒に居たのに、支えられるような私じゃなくって…本当にごめん」
ふわりと懐かしい香りがいっぱい私を包み込む。この胸の中でだけ、本当の自分を曝け出せた。
でも、本当の意味であなたを理解してあげられなくてごめんね。
一緒に居るのが幸せでこの時間が永遠に続けと願っていたのに、あなたの深い部分に触れられなくって、見過ごしてきた事。
全部、ごめん。
「やっぱり俺のせいじゃん。
全部、俺のせいにしていいよ。自分を責めないで」
そう言って、見つめ合う先、奏の大きな瞳がしっかりと私を見つめてくれていた。
どこか遠くでもない。確かにここに居る。
頬を押さえた冷たい手の先。柔らかい唇がゆっくりと私の唇へ重なって行く。
もう離さないでいて。その冷たい腕の中で考えていた事。 私は正しい人間ではない。きちんとした道もきっと選べない。
けれどもう、自分の気持ちにだけは嘘をつきたくない。
心の片隅、あなたではない人をずっと忘れられなかった。