【完】今日、あなたじゃない彼と結婚を決めました
ぐるっとお腹が鳴ると、奏はその場で大笑いした。
だって昨日は地元に行って久しぶりな場所に沢山行った。その後、奏の住む家にやってきて一晩中抱き合っていた。
その行為はまるでこの7年の空白を埋めるようだった。冷たいあなたの体に抱かれて、懐かしい匂いに包まれて、誰かの隣で久しぶりにぐっすりと眠る事が出来たのだ。
ちくりと胸が痛む。幸せだったと思えば思う程。その腕の中が変わらなければ変わらない程。
私はまだ駿くんにハッキリとしたお別れを告げていない。こんなの世間一般的に見れば、浮気だ。その時の盛り上がりで一晩を過ごしてしまうなんて、この歳になって何をしているのだろうか、私は。
それでも気持ちを止める事が出来なかった。
「どうする?何食う?」
「うーん…うーん…」
「冷蔵庫の中、食材なんかあったかな?」
私の頭を撫でて立ち上がる奏の後姿を見て、あ。と思ってしまった。
離れたくない。離さないで。と。こんなに近くに居るのに、ちょっとでも離れるとまた不安になるなんて。
冷蔵庫の中を奏は覗きながら、こちらを見つめる。