【完】今日、あなたじゃない彼と結婚を決めました
「君はいつもこの問いかけをすると必ずオムライスって言うじゃない。昔っから」
そうだ。私は迷ったっていつだって答えはひとつだった。
そんな事さえこの人は覚えていてくれたのか。
「私の事なんでもお見通しだね」
「笑真は昔から単純明快だからね。そこがまた良い所でもあるけれど」
玉ねぎとベーコンを切り刻んだシンプルなチキンライスに、ふわふわの卵を包んでくれた。卵は私の好きな砂糖たっぷりの甘め。
それが好きだという事もずっと覚えてくれていたんだ。
お洒落なキッチンでもなく、小さなテーブルと丸椅子の前でふたり向き合って朝食を食べる。
それは全然お洒落な空間じゃないけれど、どこか懐かしかった。
携帯には麻子から『どこにいんのよ?!』という連絡と、駿くんから当たり障りのない毎日のメッセージが受信されていた。
麻子には直ぐに返信をしたが、駿くんのメッセージには心を痛めるばかりだった。
…今すぐにでも会いに行かないと。話は早い方が良い。私と奏がどうなるかなんて分からない。でもこうなってしまった以上、私はもう駿くんとは絶対に一緒に居られない。
傷つけて落胆されるに決まっている。それでも、早く謝らないと。謝って許される問題ではないと分かっていても、逃げている訳にも行かない。