【完】今日、あなたじゃない彼と結婚を決めました

穏やかな時間が流れた――。



健康に気を遣っている駿くんは好き嫌いがひとつも無い。

私の作った料理を美味しいと何でも食べてくれる。きちんと朝昼晩3食食べて、煙草も吸わないし、お酒も付き合いで飲む程度。

休日にはジムに通って体を少し動かして、家に居る時もだらしない恰好をせずにきちんとしている様な人。


今日も「美味しい」と言って私の作った料理を残さず食べてくれた。お皿洗いも手伝ってくれた。仕事で疲れているというのに文句のひとつも、愚痴のひとつもこぼさない。

私には出来すぎた婚約者で、彼とならば幸せになれると信じて疑わなかった。

寝るまで一緒にテレビや雑誌を見て、穏やかに笑い合う。そして彼の寝室に行って、彼に抱かれる。


36,7度。彼の平熱は少しだけ高い。

だから抱かれたら温かい毛布に包まれているような気持ちになり、とても安心する。

私を世界で1番大切にし、守ってくれる温もり。その中に取り込まれると微睡みの様な心地よさに落ちてしまいそうになる日がある。

けれども必ず私は彼が寝静まった夜更けに寝室を後にする。

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