【完】今日、あなたじゃない彼と結婚を決めました
まだまだ春で涼しいと言うのに、彼は汗をかいていた。 ネクタイを緩めると同時にふっと小さく息を吐いて、とても安心したように胸を撫でおろした。
その姿を見てまた胸がずきりと痛んだ。
「笑真…帰って来てくれたんだね」
優しい声色。けれど、私の前にある段ボールに目を落とした彼は苦しそうに表情を歪ませる。
「駿くん、私…!」
「何をしているの…?段ボールなんて取り出して…」
「私色々と考えたんだけど、やっぱり駿くんとは結婚出来ない。
ごめんなさい。本当にごめんなさい。」
もう、謝る事しか出来ない。私はフローリングの冷たい床に手をついて、頭を下げて何度も謝罪の言葉を口にする。
茶色のフローリングが水玉模様を作っている。
…何で泣いているの?様々な事が頭を巡る。 奏が居なくなった事。その後ずっと駿くんが私を支えてくれていた事。そんな駿くんに釣り合う人間になれるように一生懸命努力をした事。
でもそれを全部壊したのも、誰でもない自分だ。