【完】今日、あなたじゃない彼と結婚を決めました
自分の部屋に入って、ベッドの上で両手いっぱい自分を抱きしめる。
自分の温もり。
駿くんの温もり。
そして、あなたではない温もりを思い出す。思い出しちゃいけないのは分かっている。それでも思い出してしまう。
私は人とは一緒に眠れない。それは小さい頃からずっと。物心つく前は母親と眠っていたのだろう。けれど、ある日を境にぴたりと誰とも眠れなくなった。
だから学生時代の修学旅行や泊りの課外実習は軽い地獄だった。 誰の所為でもない。それは幼き頃からの自分の性分という奴だったのだろう。
けれどもそんな自分が、人生でひとりだけ一緒に眠れた人間が居た。
人とくっつく事など嫌いなのに、四六時中離れたくないと願った人が居た。
’あなたではない温もり’はとても冷たくって、平均体温よりぐっと低い冷たい体だった。
私はいつでも彼とくっつきたくて、離れていたくなくって、気が付けば居心地の良い睡魔が襲ってきて、寝込んでしまうのだ。
そして朝起きたら、彼は私の寝顔を見つめながら悪戯な笑顔を向ける。その笑顔を見て、また瞼が重くなってしまうのだ。