【完】今日、あなたじゃない彼と結婚を決めました
「温まった?」
「うん。ありがとう。部屋着も貸してくれてありがとうね。」
「アハハ、ぶかぶかだぁ。」
「ねぇぶかぶか。結局洋服も全然持ってこれなくって…。
でも懐かしいなぁ。昔もこうやって寝る時は奏の服ばっかり着てたよね」
「俺のあの時お気に入りだったヒョウ柄の上下のスウェット。
あれお気に入りなのに笑真にずっと取られてさー」
「だってあれ着心地が良かったんだもん」
結局マンションから荷物を運び出せなかった。 床に散らばった宝物たちは、駿くんの手に寄って捨てられてしまうかもしれない。
奏から借りたぶかぶかの部屋着に包まれ少し胸が痛んだけれど、目の前の奏が口を横に拡げて無邪気に笑うから
今はこの幸せに溺れていたい。
誰かを傷つけながらも、一緒に居たいと願う気持ち。それはやっぱり罪だ。
この体温もこの匂いもこの笑顔も7年も離れていたと思えない程、心にぴたりとくっつきあう。もう二度と離れたくなかったから、強く強くその体を抱きしめる。
それに合わせて、奏のキスが空から降る雨のように降り注ぐ。