【完】今日、あなたじゃない彼と結婚を決めました
もう心に雨は降り注がない。 傘は持っていなくとも、奏が心の傘になってくれた。私の涙を受け止めてくれた。誰の前でもうまく泣けない私の涙を
シングルベッドでは窮屈だけど、彼の胸の中でだけ安心できる。
違う誰かといくら抱き合っても埋められなかった穴を、あなただけが埋めてくれるのは何故?
冷たい胸板に手を充てると、奏は微笑んでくれた。そして言うのだ。
「笑真、大好きだよ」
あの頃からあんまり言葉にした事がなかった愛の言葉を。
「珍しい、奏がそんな事を言うなんて」
「きちんと伝えておかないと、ある日突然言えなくなっちゃうかもしれないじゃん」
「そんな縁起の悪い事言わないでよ。
そんな言葉なんていらない。だからずっと側に居てよ。」
いくら愛の言葉を伝えたとしても明日の事なんて分からない。だから約束なんかいらない。
いらないからずっと側に居て欲しかった。
雨に濡れた空は星を映さない。
それでも見えない星に願いを掛ける。――どうかどうかもう離れる事がありませんように。と。
永遠なんてない。あの日を忘れさせて、もう一度あなたの胸の中で永遠を見つめる。
けれどもいつだって運命は容易く動いたりはしない。
その想いが強ければ強い程私達を苦しめていく。
報せが届いたのは、その数日後だった。