【完】今日、あなたじゃない彼と結婚を決めました
長い髪も、黒髪も駿くんがそれを好きで笑真にはそれが似合うって言ってくれたから合わせて来た。
でも私は短い髪も好きだし、少し明るくも染めたかった。 奏はどっちでもいいよ、と言ってくれるけど、こんな長い髪を綺麗に保つのだって本当はずぼらな私にはきついのだ。
向き直って、不思議な顔をしている美鈴ちゃんに笑顔を作る。
「美鈴ちゃん、私結婚は辞めます」
はっきりとそう告げると、口をぽかんと開けて呆気に取られる。
当たり前か。けれどきっといつか知られてしまう。美鈴ちゃんにも、職場のパートさんにも。
ある事ない事噂を立てられるくらいならば、自分からカミングアウトした方がいい。
「ちょちょ、あんた何言っちゃってんの?高瀬コーポレーションのご子息様でしょう?
これから先苦労しなくても生きてけんのよ?頭がおかしくなった?」
「本当は、結婚したら仕事を辞めて欲しいって言われてたんです。」
「いい事じゃんかよ。今どき専業主婦で居られる事なんて幸せな事よ?」
「でも私は何だかんだ言ってこの職場が好きだし、仕事自体も嫌いではないんです。
でも彼に言われて、彼の言う通りに専業主婦になった方がいいのかなってずっと考えてました。
自分の人生なのに、誰かに言われて何かを決めるのっておかしいですよね」