【完】今日、あなたじゃない彼と結婚を決めました
自分の名前が呼ばれて、思わず肩がびくりと上がる。
名指しで電話?珍しい。名指しでのクレームだったらどうしよう。そんな事を思いながら作っていたシフトを一旦保存して、振り返る。
事務員の女性は複雑な顔をしてこちらへ目を向ける。
「望月さん…高瀬さんって方から電話なんだけど
緊急みたいだから急いで取り次いで欲しいって」
「へ?」
その言葉を聞いて心臓が跳ね上がる。
駿くん?!
ここ数日携帯の方には連絡はめっきりない。何故会社の電話に?
疑問に思いながら、掛かって来た電話を取り次ぐ。
「もしもし?」
「もしもし、笑真さんかい?」
一瞬で駿くんの声ではない事は分かった。けれどどこかで聞き覚えのある声が、ゆっくりと私の名前を呼ぶ。
落ち着いたように喋るけれどどこか存在感がある。…駿くんのお父さんだ。
「駿の父親ですが…」
「あ、はい。ご無沙汰しております…。
あのー…?」
「申し訳ありません。先ほど携帯にも掛けたのですが、お仕事中ですよね。
会社にまでかけてしまい申し訳ない」