【完】今日、あなたじゃない彼と結婚を決めました
運ばれた病院を聞いて慌てて電話を切った。けれど指の震えは止まらなかった。
駿くんが事故?緊急手術って…。大体しっかり者の駿くんが事故を起こすなんて…。
どうしよう。どうしたらいい?頭が真っ白になって、事務員さんに肩を叩かれる。
「高瀬さんって望月さんの婚約者の方でしょう?電話の方が事故に遭ったって説明してくれたけれど、早く行った方がいいわ。
鮫島課長には私の方から行っておきますので…」
そうだ。駿くんはまだ会社の一部の人には私の婚約者になるって言っているんだ。
混乱してそれどころではなかったが、ぺこりと頭を下げて慌てて会社を飛び出した。
モール内のタクシー乗り場でタクシーに乗って、震える手で携帯を握る。 けれどそれはするりと指から落ちてしまった。
背中に嫌な汗をかいている。どうしよう。どうしよう。そればかり繰り返していて、酷く混乱していた。
駿くんが事故で、もしもそのまま居なくなってしまったら…私は彼にきちんとした謝罪もしないまま…。絶対に後悔する。
震える両手を強く握りしめて、その場でゆっくりと息を吐く。