【完】今日、あなたじゃない彼と結婚を決めました
「大丈夫です。出血が酷かったようですが命に別状はありません。麻酔からさめたら目を覚ますと思いますよ。」
命に別状がない。その言葉を聞きホッとしたのと同時に腰の力が抜けて行った。 駿くんのお父さんに肩をかしてもらい、駿くんの眠る病室へ行くと、そこには目を閉じ眠っている彼が居た。
大丈夫。息をしている。そう確認した後、ぶわあっと涙が溢れだした。
手足もぐるぐるに包帯で巻かれ、顔にも傷を少しだけ負っていたが体も温かい。
「よか、良かった……」
「笑真さん大丈夫かい?
私は主治医の先生の話と入院の手続きをしにいかなくてはいけないんだが…」
「はい。私なら大丈夫です。 私ここにいます。ここに居てもいいですか?」
「勿論だよ。」
にこりと笑った駿くんのお父さんが病室を出て行こうとした時だった。
病室の扉が乱暴に開き、そこに立っていたのは息を切らせていた奏だった。
「お前……」
「父さん…。兄貴は?」
「大丈夫だ。命に別状はない。それよりもお前、いつ日本に…」
奏とお父さんの間にピリッとした空気が流れたのを感じた。だってこの人は、奏という存在を捨てた張本人だ。