【完】今日、あなたじゃない彼と結婚を決めました
「日本には最近帰ってきた。そっか、命に別状はないか。それなら安心したよ。
父さん、母さんに連絡はしたのか?」
「お前に父さんと呼ばれる筋合いはない!」
彼の父親はこんな人だっただろうか。少なくとも、当時離婚していたとはいえ奏だってこの父親と上手くいっていた。
それを血の繋がりがないと分かってから、ここまで態度を変えるものか。 彼の冷たい視線が奏へと降り注がれる。それでも奏は表情ひとつ変えなかった。
「それはすいません…。けれど母さんには連絡を。俺からします」
「その必要はない。あれは来ないだろう。あいつは駿の事などどうでも良いのだ。」
「そんな事……」
「お前も何を思って日本に帰って来たのかは知らんが、高瀬の会社にお前の居場所などはない。
会社は全て駿の物だ」
「そんなの、分かっている…」
奏には高瀬コーポレーションを駿くんから奪い取るつもりなんて毛頭ないだろう。
けれどふたりの父親はそう冷たく言い放ったまま、私達に背を向け病室を出て行った。
奏は一瞬下を向いて困ったように私へ笑いかけた。かなで…声を掛けようとしたその時。