【完】今日、あなたじゃない彼と結婚を決めました
「母さんが奏だけ連れて出て行った時はすごく寂しかったけれど、同時に父さんの前ではしっかりとしていなきゃって思って。
父さんも真面目な人だったから社長をやりながらも誰かに俺を任せる事はしなかった。
慣れない料理も毎日頑張って、遊びにも連れて行ってくれて、なのに仕事もちゃんとする人でさ」
「駿くんの真面目さはお父さん譲りだね」
その言葉に穏やかな笑みを作る。けれど決してこちらを向いてくれる事はなく前を見たまま、大切に言葉を選ぶように話す。
「だから愛情を感じなかった訳じゃないんだ。
母さんとも奏とも離婚した後会える時間を父さんは設けてくれたし
でも子供ながらに思ったよ。母さんはどうして俺を連れて行ってくれなくって、奏だけを連れて行ったんだって。言葉に出した事はないけどね」
「それは……」
「少しだけ大人になって何となく事情は分かった。
離婚した理由も、どうして母さんが俺だけ連れて行ってくれなかったのも。」
「え?」
「奏の父親は…俺の父さんの弟だったんだ」
「は…?」