【完】今日、あなたじゃない彼と結婚を決めました
「笑真に結婚はしないって言われた時、自分でもどうかしていた。
愛してた人を…この手にかけるような真似をするなんて…
でもその時同時に…父さんが奏の存在を許せなかった理由も何となく分かった…」
自分の手を見つめる駿くんは、少しだけ震えていた。
「そんな事で謝らないで。駿くんを傷つけたのは私だよ?悪い事をしたのも…全部私」
「違うんだ…」
自分の両手を握り締めたまま、駿くんは俯いてしまった。言葉尻が震えている。
その時初めて駿くんが、私の方へ顔を向けた。
優しそうな顔が少し困っていた。それはきっと彼にとっての悲しみだった。
「俺はずっと笑真が好きだった。」
「ずっと?私を?」
「奏と付き合ってた頃から。でもこれはもしかしたら、奏と付き合っていた笑真だったから好きだったのかもしれない。
俺はきっと心のどこかで奏を憎んでいて、奏の物ならば何でも欲しかっただけなのかもしれない。」
奏と付き合っていた時から私を好きだった?確かに駿くんには昔から妹のように良くはしてもらっていた。けれど…。