【完】今日、あなたじゃない彼と結婚を決めました
「大丈夫。ちょっと待ってて」
そう言って、駿くんは自分の部屋へ入って行く。
戻って来た時、その手の中には紙のような物が握られていた。
そしてそれを私へと渡す。
どうやら便せんのようだ。その無地の便せんには見覚えがあった。
再びソファーに座った駿くんはそのまま、私の方へ深く頭を下げた。
「あの日、奏から手紙を預かって笑真たちが暮らしていたアパートに置いたのは、俺だ。
そして俺は中身を読んでしまった。…これはあの手紙の続きだ」
「え?!」
シンプルな別れの言葉の手紙。その手紙に続きがあるのは、知らなかった。
けれどその手紙の話をしている時奏と話がかみ合わなかったのは、覚えている。
渡された手紙をゆっくりと開く。持っている指先が震える。
その中には、良く知っている奏の文字が並んでいる。
「これ……」
途中で涙が溢れ文字が滲んでいく。