【完】今日、あなたじゃない彼と結婚を決めました
「俺が呼んだんだ。」
「え?駿くんが?」
何で…?そう言おうとする前に奏が駿くんに向かって頭を下げる。
「ごめん。兄貴。俺きちんと言わないといけないと思ってた。
兄貴に笑真の事を頼んでおいて今更勝手な事ばかりして、ごめん…。
それでもどうしても俺…ずっと笑真が忘れられなかった。」
奏のその言葉に、駿くんは柔らかく微笑んだ。
そして奏の肩を軽く小突く。
「本当に待たせすぎだっつーの」
その姿は、高校生の時に見た兄弟の姿そのまんまだった。仲の良かった頃の、あの時のふたりだ。
こちらを向いた駿くんが私の背中を押す。
「俺が頼んだんだ。笑真を迎えに来てやんなって。」
「え…どうして?」
「きっと笑真の事だから優しいから俺が事故にあって怪我をしたって言ったら俺の側にいようとするだろう?
だから奏と一緒に帰んな!」
「でも駿くん…怪我が…」
「子供みたいに一緒に居てくれって言ってしまってごめんな。
事故を理由にしてでも引き止めたかった…。
笑真の気持ちなんてとっくに分かってたのにな。
だいじょうぶ。俺はしっかりしてるから一人で何でも出来ちゃう。でもね、笑真。俺の弟はあんまりしっかりしてないみたいだ。
だから一緒に居て、こいつの事を支えてやってくれ」