【完】今日、あなたじゃない彼と結婚を決めました
明るくそう言い放った駿くんを前に泣きそうになった。
奏は私の隣にやってきて、手をぎゅっと握りしめる。冷たい指先…それを握り締めた瞬間何よりも安心する事に気が付いた。もうこの手だけは離さない。
「兄貴、ごめん…。ありがとう」
駿くんは少しだけ照れくさそうに天井を見つめた。
「その何だあれだ。今度いつか落ち着いたら飲みに行こう。社会人同士話もしたいし
何があってもお前は俺の弟だからな」
「あに…き…」
「あー、もうお前は泣くなって。もう27歳だろう?
お前は本当に小さい時からおにいちゃんおにいちゃんって俺の後ばかりついてきて。
たく、しょうがねぇーなぁ」
片手で奏の体を支えるように抱きしめる、駿くんの横顔はお兄ちゃんの顔だった。
奏はその胸に顔を埋めるように泣き続けた。
あなたは優しい人。そんなのずっとずっと知っていた。
謝っても謝り切れない。お礼を言おうにも、伝えきれない。
どんな時だって背中を押してくれて、寂しい時に側に居てくれた。