【完】今日、あなたじゃない彼と結婚を決めました
一体何から話そう。
この1年会えなかった時間の事。話したい事は沢山あるし、奏から聞きたい事もたくさんある。
真っ白のティシャツとジーンズのまま、走り出して超えて行く。
予想通りというか何と言うか、待ち合わせ場所に着く前にぽつりぽつりと雨は降りだしてしまった。
顔にあたらないように片手を頭の上にあてて、見つめた先には彼が立っている。
そしてこちらへ気づくとその屈託のない顔で大声で笑い声を上げるのだ。
「あーはっはっはっ、湿気で髪ぐちゃぐちゃになってやんの!」
「こ、これはいきなり雨が降って来たから。って奏傘持ってないの?!」
「笑真が持ってると思ったんだもん。それに俺久しぶりに帰国した訳よ?傘なんて持ってる訳ないでしょう」
奏の横に黒いスーツケース。
目の前には相変わらず大きな瞳を揺らしながら、笑う彼。
ふたりして、雨でびしょびしょに濡れながら笑い合う。きっと私も今彼と同じ笑顔をしているに違いない。