【完】今日、あなたじゃない彼と結婚を決めました

「どうしてって…?本当にどうしてこうなっちゃったんだろうね……」

上手く笑えているか分からない。 けれど笑っていなくては、まるでこの結婚が私にとって幸せではないような気もするんだ。

「私ったら何を言っているのだろうね。そりゃあいつまでも10代のままじゃあいられないよね。
ごめんね。
ただただ笑真ちゃんの結婚相手が高瀬先輩だって聞いて驚いちゃって…。
大人になったら色々あるよね。確か奏、大学を中退して海外に留学しちゃってたんだよね。
そうだったら昔のまんまって考える私の方がおかしいんだ」

「え?奏大学を中退していたの?」

「笑真ちゃん、知らなかったの?」


―――――



どうしても捨てられなかった物がある。

ベッドサイドのオレンジの照明だけを点けて、クローゼットの奥にしまい込んだオレンジの箱を取り出した。

埃の被ったそれは、箱の上に真っ黒のマジックで汚い字。’えまの宝物’と書かれている。 オレンジの頑丈な箱は、その当時私が好きだったブランドのショップの箱だ。

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