【完】今日、あなたじゃない彼と結婚を決めました

お揃いだった白いダミエの財布とキーケース。
コンビニで買った玩具のキーホルダー。
初めて貰ったハート型のネックレス。
彼がつけていたダイヤで出来た片方だけのピアス。


この箱の中には、過去がありすぎる。共に過ごした3年間の記憶がそのまま詰め込まれている。 そしてその全てがあの頃の私の宝物だった。

震える手で、ひとつひとつ取り出していく。

そして1番底にあった物は、当時1番好きだった猫のキャラクターのアルバムだった。


ゆっくりと表紙を捲る手は、やはり震えていた。

ぬかるみにハマったように、下へ下へ吸い込まれていく感覚。一瞬目の前が真っ暗になって、絶望でいっぱいに包まれる。

まるでこの世界でずっとひとりぼっちだったように。

’笑真と奏はそっくりな顔をして笑うな’ あぁ、これはいつの、誰の言葉だっただろうか。

顔を寄せ合って笑い合う1枚の写真。 私は、こんな風に笑える人間だったのだろうか。


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