【完】今日、あなたじゃない彼と結婚を決めました
’雨の日に出会ったふたりが、絶対に出会うはずのなかった時間軸の中で繰り広げる
珠玉のラブストーリー。’
その謳い文句の中で、美しく描かれた男女が見つめ合い手を取っていた。
やはりどこか懐かしい。この監督の作品はただのラブストーリーなだけじゃなくって、その時々の社会問題を取り込んでいて、中々に複雑なストーリーなのだ。
ぼんやりとポスターを見つめている時、だった――。
「笑真、俺ちょっとトイレに行ってくるな」
「あ、うん。行ってらっしゃい」
駿くんに視線を向けて、再びポスターへ目を向ける。
視界の中、男女のカップルの姿が目に入る。それをぼんやりと見つめる。 仲の良さそうなカップルの後ろ姿。同い年か少し年下くらいだろうか?
ほんのりと茶色い髪の毛の派手めな女性が、男性の腕を組んでパンフレットやグッズを指さし大きな声で笑っている。その横顔は、とても幸せそうだ。
「えー?!これ欲しいの?!絶対邪魔になって捨てちゃうでしょう?!」
少し大きめで、高いトーンの声。その声には何故か懐かしさがあった。
「大切にするもんッ」
「いや、絶対君捨てるでしょう。物を大切にするタイプじゃねぇーだろ。」