【完】今日、あなたじゃない彼と結婚を決めました
「笑真?どうした?」
「へ?」
「ちょっと動きが挙動不審。何かあった?」
駿くんが私の姿を見て、くすっと小さく笑みを落とす。
「あー…何でもないの。何か他に楽しそうな作品上映されてるのかなーって…」
「本当に笑真は映画好きだよな。今度平日のレイトショーでも見に来ようか」
「うん…そうだね。」
私は特別映画好き、という訳ではなかった。
けれど駿くんと付き合うようになってからは、それなりに知識もついてきた。
心に残っている映画は数作しかないが、余り映画を見ない人よりかは見ていると思う。
でも本当は流行りものの、邦画が好きだった。 今日だって本当は大好きな監督の新作、雨のメロディーが見たかった。そんな事を口に出しては絶対に言えなかったけれど。
結局映画館に彼の姿は無かった。
見終わってとっくに館内を後にしたに決まっている。
お昼は映画館の近くにあった、駿くんのおすすめの洋食屋さんに入った。
隠れ家的なその洋食店は、知る人ぞ知ると言った感じで目立つ通りにはなかったけれど、小ぢんまりとしていて夫婦らしき男女が経営している素敵なお店だった。
お店に入った瞬間から、とても良い匂いが店内に充満していた。 可愛らしい小物も飾ってあって、良い感じのお店だった。