【完】今日、あなたじゃない彼と結婚を決めました
彼は、どんな事があったって大声を上げて笑ったりはしない。小さく、けれども優し気に笑う人だった。
「そういえばさ、結婚式の事なんだけど」
「うん。何かあった?」
「招待客の事そろそろ本気で考えなくっちゃって思って」
「確かにそうだね。でも私は…駿くんみたいにそんなに招待する人っていないかも…」
「笑真は友人代表は麻子さんに頼むつもりなんだろう?」
「うん、一応ね。でも麻子とも最近は全然連絡取ってないや。
あ、麻子仕事が忙しそうだから」
小学校からの親友の麻子は大学を卒業してから、大手のアパレルメーカーに勤務している。だから忙しいのは本当だ。
けれど、駿くんと付き合ってから連絡を取る頻度はぐっと減ったのも確かだ。彼が心配するといけないから、そんな事はわざわざ口に出して言わないけれど。
麻子は……結婚式にはきっと来てくれる。けれど、私と駿くんの結婚は余り良く思ってないかもしれない。
「そっか。麻子さんアパレルだっけ?」
「うん。最近は休日もあんまり関係なく働いてるって言ってた…。
それより駿くん…お母さんは呼ぶの?」
お母さん、とその言葉を口にした途端、駿くんの表情が一瞬曇った。