【完】今日、あなたじゃない彼と結婚を決めました

「あはははは~ッ。笑真、声を掛けてもずっと下を向いて質問に答えてて今超感じ悪かったぞ?」

だって…。

目の前で一生懸命傘を品出ししている人間に対して、傘が欲しいんですけどって言われても。
目の前にあるじゃん。とちょっと嫌な感じになってしまうではないか。

「だって…、てゆーか、何で?!」

大きな疑問を口にする。何でここに居るの?そして、握りしめた手をどうして離してくれないの?

相変わらず冷たい手。

私は彼が手どころか全身冷たいのを知っている。昔から体温が低い方だって自分で言っていたからだ。

しかし全く手を離してくれそうにはない。ぴたりとそこだけ時間を止めたまま、けれどこの手を離してしまったら私は再びその場に崩れ落ちてしまうかもしれない。

「傘を買いにきたんだけど?打ち合わせで近くまで来てたんだけど、突然の大雨にやられちゃって。」

「傘ならそこに…」

空いてる片方の手で、先ほどまで品出ししていた紳士用の傘が並ぶコーナーを指差す。

値段はまちまちだけど、ここに2000円以下の傘は置いていない。頑丈で使い捨てにするには大層な値段がついている品物ばかりだ。

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