【完】今日、あなたじゃない彼と結婚を決めました
勝手な男だ…。1階にはカフェが数店舗立ち並ぶ。お店の名も告げずにカフェに来いよなんて言って、私が迷ったりするとは思わなかったんだろうか。
けれども私は…奏が選ぶお店は訊かなくても分かってしまう。彼は間違いなく有名チェーン店のカフェに行くだろう。そんな事も分かってしまう自分にはさすがにうんざりしてしまうが。
「よッこっちこっち。」
有名チェーン店内のカフェの奥の席に彼は座っていて、私の姿を見つけると同時にこちらに向かって手を振って来た。
声のボリュームを少しは抑えられない?!目立ちまくってるんですけど?
「シッ。あんたは声がデカいのよ」
私の指摘に嬉しそうに声を上げて笑った。
勿論目立つのは声が大きいだけではない。奏は昔から目立つ存在だった。その場にいるだけで異彩な雰囲気を放つようなオーラがどこかあった。
それはあの頃とちっとも変わらない。
容姿端麗とはこの人の事を言うのだ。駿くんとはまた別のタイプの。 駿くんは学生時代から優等生タイプの誰からも好かれるタイプの人間ではあった。奏は少し違う。学生時代からちょっぴりやんちゃで、どこに属しても目立ってしまうタイプだった。
「ちょっと、珈琲買ってくる」
「珈琲?」