【完】今日、あなたじゃない彼と結婚を決めました
その言葉に奏は眼を丸くする。
その手の中には、甘そうなフラペチーノがある。しかも今期発売の新作の、苺のショートケーキうんちゃらという大層な名前がついた派手派手の。
美味しそう…。ジトっとした目で見つめると、奏はそれを差し出した。
「ちょ~旨いよ。飲む?」
「いらないわよ。珈琲買ってくるからちょっと待ってて」
奏は昔から甘くない珈琲は飲まない人だった。甘い珈琲もどちらかといえば苦手で、でもホイップが乗っていたりその月々の果物のフレーバーの物ならば好んで飲んでいた。
昔は、私もそうだった。
面白みのないただの珈琲をわざわざショップに来てまで飲んだりはしないタイプだった。
「あ。真似っこじゃん」
私の手に持っている苺のフラペチーノを見て、奏は屈託なく笑う。
「別に。今日はたまたま気分だし」
「え~。ベリーの奴にしちゃったの?もう1種類ホワイトの奴あったじゃん。そっちにしてくれればシェア出来たのに…!」
「何であんたとシェアしなきゃいけないのよ」
そんなカップルみたいな事、出来るもんか。
カラカラに乾いた喉に甘ったるいフラペチーノが吸い込まれていく。…久しぶり。こんな甘いの飲むの。
こんなに美味しかったっけ?最近はめっきりホットの珈琲ばかり飲んでいたから。