【完】今日、あなたじゃない彼と結婚を決めました
「美味しいね?」
にこりと笑みを浮かべて首を傾げる。そんな奏に対して「まあね」と素っ気ない返事をする。
改めて向かい合って見て、偉く緊張している自分に気が付いた。それとは対称的に奏は余裕気に頬杖をついてニコニコと私の顔を見つめる。
今更話す事なんて……。ガラス張りのカフェの外を見ると、雨脚は酷くなる一方だった。
広い駐車場にはショッピングモールに入って来る人と出ていく人のカラフルな傘が行き来している。
「一体何の用?私忙しいんだけど」
「えぇー?久しぶりに会ったのにそれは冷たすぎない?」
「いきなり来て人の事情も訊かずに勝手にカフェで待ってるなんてよく言えたものね」
「それでも来てくれたじゃん」
にこにこと笑い続ける奏を前に、大きなため息が漏れる。
「…奏、今何やってるの?」
「今はIT関係の会社を立ち上げて色々な事をしているよッ。
ずっと海外の方に居たんだけど、日本にも支社を立ち上げるって事で日本に帰ってきたんだ」
「IT?あの奏が?」
「そうなんだよ。ゲームのアプリの開発とか。洋服のショップとか。幅広くやってるんだ。
この携帯ゲーム知らない?日本の会社と連携して今話題になってると思うんだけど」