【完】今日、あなたじゃない彼と結婚を決めました
――元来私はとても嫉妬深くてヤキモチ妬きな人間だったように思える。
けれどそうじゃなくなったのは駿くんがとても大人でスマートで、私に心配をかける行動を取らないからだと思っていた。
「そういえば、麻子さんに連絡取った?」
「あ!忘れてた…!」
「しっかりしてよ。親父にも言われているんだ、式の日取りは決めたのかって。同棲を始めたんだから、ちゃんとしなくちゃいけないぞって。
今度休日休みにしておいて。人生で一度切りなんだから最高の場所で挙式はあげたいだろう?ふたりで色々と見よう」
「そうだね。式場選び楽しみだね」
そうだ。私は人生で一度きりの結婚を控えている。 だからいちいち過去の事に心を動かされている場合ではない。頭では分かっているのだ。
その夜は中々寝付けなかった。
明日は遅番だからゆっくり出来る。けれど、駿くんは普通通りに出勤だから朝ご飯を作らなくては、明日の朝はアジの干物を焼こう。そんな事を考えだしたら眠れなくなってしまって、更には余計な事を考え始めてしまう。
それもこれも、あの大雨の日に奏に再会してしまったせいだと思う。
あの日以来、駿くんにはとても失礼なのだが私の頭は奏でいっぱいだった。