【完】今日、あなたじゃない彼と結婚を決めました
私は2年生になるまで一言も奏とは口を利いた事がなかった。それでも運命とは時に悪戯な物で、高校2年の冬の日私は偶然にも奏と運命が繋がってしまう事になる。
その頃の私の1番の楽しみは、ライブハウスに行く事だった。
音楽のジャンルは様々。マイナーな所からメジャーな所まで。ミーハーと言えばミーハーだったとも思う。
その頃の私が夢中になっていたのは、SNSを中心に10代の子のハートをぎゅっと掴んでいたとある歌手だった。名はカタノセリアと言う。思春期特有の心の闇を詩に乗せた彼女の切なく痛い歌に夢中になっていた。
テレビに出演するような歌手ではなかった。ひっそりとひとりでライブに行っていた。
『望月?』
だからそのライブハウスで誰かに声を掛けられる事なんてないとは思っていた。
騒然とするライブハウスの中で、とびっきり目立つ金色の長い髪。大きな瞳は、キラキラと輝きだして思わず息をするのも忘れてしまった。
『安田…くん?』
『びっくりした。どこかで見た事あるなーって思ったら望月だったんだもん。ひとり?』
『うん、まぁ…』
『俺もひとり!せっかくだし一緒に見ようよ。学校でカタノセ知ってる奴全然いねぇんだもん」
『私もッ。ネットでは結構有名なんだけど皆全然知らなくって。でもびっくり。安田くんがカタノセリアが好きだとか…
全然イメージが違う』