【完】今日、あなたじゃない彼と結婚を決めました
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「ん……笑真…?」
全く似ていない。駿くんは、奏には。
ベッドの上、目を瞑ったままうわ言のように私の名前を呼んだ。
「どうしたの?駿くん」
指先で顔を擽ると、口元だけ笑みを浮かべて私の体へすり寄って来た。
「今…夢を見ていたような気がした」
「夢?」
「うん。笑真と出会った頃の」
「それっていつの話よ」
私は小学生の頃から駿くんの存在は知っていたけれどね。
「あれはー…大学2年?3年の頃だったっけか?」
「それ初めて会った時じゃないし…。私は駿くんの事は小学校の頃から知ってた。」
「ごめんって。初めて笑真を認識し始めた時。あの時から笑真は可愛かったなぁー……」
まだ夢うつつなのだろうか。口元だけに笑みを浮かべて目は閉じたままだった。少しだけ掠れた声でゆっくりと喋る。
綺麗な顔。昔からそこは変わらないけれど、頬から髪にかけてゆっくりと駿くんの肌を指で擽る。