【完】今日、あなたじゃない彼と結婚を決めました
その話をしてしまってハッとしてしまう。
私は何を呑気に、駿くんの話を奏としてしまっていると言うのだ。
そして…また音楽性の点で彼と気が合ってしまうのが悲しい所。どうして私達は同じ感性を持っていて、同じ物を好むのだろう。
今になって見たらこんな接点全然嬉しくないのに…。奏と話していると、嫌でも昔の自分を思い出してしまう。
「新曲のCD買った?」
奏の問いかけに首を横に振る。
「家にあっても家じゃあ聴けないから。こっそりとひとりでネットで聴いてる」
「何それ、変なの」
「うるさいな、奏には関係のない事でしょう?」
くくっと楽しそうに笑うと、彼は着ていたジャケットのポケットから何かを取り出した。
手の中には2枚のチケット。
それはライブチケットだった。先ほど話した、芹沢花音の。大きなホールからではなく、ライブハウスから始まるのが彼女らしいやり方だとは思っていたが。
そのチケットを何故奏が持っていたのか。
「まさか笑真も好きだとは思わなかったけれどさ、一緒に行く?」
「え……?」
ライブなんて、駿くんと付き合ってから一度も行っていない。
音楽は好きな人だったが、ライブやコンサートなどの人混みは余り好きじゃないらしく、大きな音を聴いていると頭が痛くなるそうだ。
だから自動的にそういった類のイベントには参加していない。