【完】今日、あなたじゃない彼と結婚を決めました
かといって、奏と一緒にライブに行く理由なんてどこにもない。寧ろあり得ない。
チケットは受け取らず、ぷいっと奏から背中を向けた。
「一緒に映画に行ってた可愛らしい彼女と一緒に行けばいいじゃない」
「えー…あぁ、あれ彼女じゃないよ」
腕を組んで楽しそうにしてたじゃない。ちゃらけてる雰囲気は昔と何も変わらないのね。
「いやマジで彼女じゃないからね。仕事関係の人で仲良くはしてるけど」
知っているのだ。奏が彼女じゃないと言ったら彼女ではないと。きっとあの人が彼女であるのならば、はっきりと彼女だと私に言うだろう。
彼は正々堂々としていると言うか…そういう曲がった嘘をつく人間ではない。
しかしあの人が彼女でないとしても、私が奏とライブに行く理由にはならない。
「え?もしかして妬いてんの?」
前へ回り込んで、何故か嬉しそうに目を瞬かせる。
「何で私が妬かなきゃいけないのよッ」
強くそう言い睨みつけると、奏は満面の笑みを浮かべる。
本当に何を考えているのか分からない人だわ。
そしてチケットを1枚、私の手へと強く握らせる。