【完】今日、あなたじゃない彼と結婚を決めました
今日も正しい事しか言わない私の恋人は、会社に居たら理想の上司に違いない。
社長の息子だからって偉ぶった所も見せずに、仕事も出来てさり気なく部下のミスもフォローする。大切な取引先とのトラブルの責任も嫌な顔せずに負って。
社会人になって大人の悪い所は沢山見て来た。トップに立てば立つほど狡い人間も多い中、駿くんは人間が良く出来た人であると思う。
そんな駿くんの正義感が強くて正しい性格は、尊敬はしている。
でも時にもっと肩の力を抜いてもいいんじゃないかなって考えたりする事もある。愚痴のひとつやふたつあるだろう。だって私にだってある。
繁忙期には残業も増えるし、パートさん同士の争いは絶えないし、上司は優しいけれど面倒くさい仕事を押し付けられたり
私みたいなどこにでも居る会社のいち社員でも不満は溜まって行く一方なのだから、駿くん程の立場になれば思う事は多くあるだろう。
けれど駿くんは私に愚痴のひとつもこぼしはしない。 勿論そんな駿くんに釣り合う人間になりたいから、私だって彼に愚痴やマイナスな言葉を言ったりはしない。
「きちんと戸締りしなよ?」
疲れた顔を一切見せずに笑顔で私の頭をぽんぽんと撫でる。
「うん。了解。休みだし、ショッピングにでも行こうかなぁ。天気も良いし」