【完】今日、あなたじゃない彼と結婚を決めました

私を褒めちぎる1年年上の美鈴ちゃんの方が、私にはよっぽど魅力的な女性に見える。

豪快に笑って、自分の気持ちに正直で、本人はお喋りなのが玉に瑕だと言っているけれど、その明るい笑顔は周りを元気にさせるし、とてもキュートだ。


私は自分で自分が分からない。自分がどういった人間なのか、駿くんと付き合った3年間。私は彼の喜ぶ服を着て、メイクをして、彼の喜ぶ趣味を持って、彼の考えに合わせて生きて来た。

駿くんが全て。 

あなたの色に染まるのが幸せ。そういった類の物ではなくって、敢えてその色に染まり切ってしまいたかった。自分の中に根付いてしまった何かを払拭するかの如く。

「あッ。私課長に呼び出されてるんだッ。早く行かなきゃ。
今度仕事終わったら飲みに行こう?連絡するね」

「はーい!頑張ってね、美鈴ちゃん」

そう言って彼女はヒールをコツコツと鳴らし、更衣室から足早に出て行く。
制服に着替えて更衣室にある鏡で全身をチェックする。

ブラウン系でまとめた落ち着いたナチュラルメイク。黒に近い焦げ茶色の背中まである長い髪の毛。それを黒いゴムでひとつにくくる。

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