【完】今日、あなたじゃない彼と結婚を決めました
「ふっ、何を他人事の事のように言ってるのよ。
別に私は高瀬駿が悪いって言ってる訳じゃないのよ。最初は嘘でしょう?って思ったけどさ。
あの高瀬コーポレーションの社長の息子なら、笑真の将来も安泰だろうし、あの男は昔から生真面目で優しそうな奴だったしね。
笑真が幸せならば私はそれでいいんだよ」
「幸せか…。ふふ、幸せ、私はすっごく幸せ――…幸せなんだよ。」
「笑真?」
壁に掛けられている時計は午後の2時半を指していた。
ベランダの窓から見える空は、雲一つなく相変わらず晴天。
やっぱり天気予報はあてにはならない。
女心と同じくらいには。
幸せ。そう言えば言う程、自分に言い聞かせているようだ。これは正しい選択で、本来であるならば私は幸せの絶頂にいなくてはいけない。
あの頃は幸せだと口に出さなくても、心や気持ちで幸せを感じていたような気がする。
それはそれは遥か遥か遠い記憶だ。