【完】今日、あなたじゃない彼と結婚を決めました
『本気で言ってるの?』
『だからさぁ、冗談とかでこんな事言わないんだけど。
俺と付き合ってよ』
ほんのりと頬を赤らめて照れくさそうな表情をしたのが印象的だった。
付き合ってと言われても現実感がなくって、ぺこりとその場で小さくお辞儀をした。そして顔を上げて’私で良かったら’と返事をすると、奏は大きく口を上げて笑ったかと思ったら私を抱きしめてそのまま持ち上げた。
周囲の視線なんか気にすることなく、声を上げて’やった!’と叫んだ。
突き抜けていく青空のように明るい人で、嬉しい時に漏らす豪快な笑い声は燦燦と輝く真夏の太陽のような人だった。
その強烈な存在で、私の心をじりじりと燃やしていった。
付き合い始めは不安だった。
奏は余り女の子と長続きしないタイプだったし、私は男の子と付き合う事自体が初めて。
そんなふたりが付き合って果たして上手くやっていけるものなのかと。付き合い始めの頃は麻子も『あんた遊ばれてんじゃないの?』と心配したが、その懸念も空しくなるほど奏は私を大切にしてくれた。
毎日のように一緒に居た。雨の日も晴れの日も。互いの想いを共有していく中で、喧嘩も沢山した。
私と付き合い始めてからも相変わらず女友達の多かった奏にヤキモチを妬いて、泣いて困らせた。怒鳴り合いの喧嘩もしたし、意見が食い違った時はお互い一歩も退かない程頑固だった。
それでも奏と過ごす時間は生まれて初めて感じる程の幸せで、それは言葉にしなくてもいつも私の心の中を占めていた。