【完】今日、あなたじゃない彼と結婚を決めました

「私、駿くんと結婚するんだよ?」

「分かってる。…何かごめん」

麻子との電話を切って、暫くソファーの上でボーっとしていた。

夕暮れのオレンジが、空を紅く染め上げてく。やっぱり今日は夕方から雨だなんて嘘だ。近頃の天気は安定しない。まるで私の心を映し出すように――。


17時を迎えると、夕暮れはすっかり沈んでしまって漆黒の闇が空を染め上げていく。

ぼんやりと携帯の青白い画面に視線を落とす。

ぴこんとメッセージを受信する音が静まり返った室内に響いて、そこには駿くんからのメッセージが途中まで映し出された。

それを読む気にはなれなかった。 さっきの麻子との電話の会話が頭をぐるぐると巡る。

’安田には何か事情があったんじゃないかな?’

だったらどうだと言うのだ。どんな事情があったにせよ、私の顔も見ずに私の前から姿を消したのは変えようのない事実。

あの日まで、奏との未来を信じて疑わなかった。まるで自分の半身のような存在で、居なくなってしまったらこの世界で立っていられるのかさえ分からなかった。

事実、奏が姿を消した数か月。私は何をする気にもなれずに、死んだように毎日を生きていた。
失ってしまった半身は、もう取り戻せない。私を自分のようだと言ってくれたのは、奏の方だったのに。

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